夏への準備

 もう7月になるのですが、気温が低い状態が続いています。 日高農場の牧草もチモシーの成長が遅れているため、オーチャードの圃場を先に刈り取りしています。(例年だと、刈り遅れのオーチャードは、繁殖和牛用になっています。)しかし、チモシーは、丈が伸びないうちに穂が出てきたために、もう刈り取りしないとダメで、今年は収量が少なそうです。 

 日高農場には、60haほどの牧草面積があるのですが、約25haを刈り終わったところです。天気が3日以上晴れが続かないので、刈り取りが進まないのです。今週も水曜まで晴れはなさそうですが、その後は、晴れが続きそうなので、今週で終わらせることができそうです。

 けれど、札幌の気温が日高に比べるとかなり高く、今年は気温が高いとの長期予報なので、夏を前にいろいろ準備しています。

 札幌牛舎は、トンネル換気システムが導入されています。 それでも、40頭の牛を舎内で管理すると温度が上がります。 また、一部の牛床(西日が差す牛床側、空気の流れが悪い出入口の左右)で温度がかなり高いことも分かっています。そのため、工場扇を4基購入して、空気の流れの悪い場所に設置して、空気溜まりをなくしてみたいと考えています。

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今回、給与しているレブセルSCです。

 日高農場では、ヒートダウンというナイアシンを給与していました(体表面の血流を
増やすことで熱交換を促進して体温を下げる方法。 簡単に言えば、車のラジエターのコアを増やすみたいなもの。)が、札幌牛舎では、レブセルSCという酵母を給与することでヒートストレスを下げるという方法を選択しました。 

 酵母と言えば、日高農場時代にCLEAN MADEという黒麹菌を給与していました。
牛の消化吸収を向上させるほか、鶏のコクシジウムの予防にも効果があるとのことでしたので、その効果も期待して給与しておりました。

 今回のレブセルSCには、さらなる効果を期待しています。

 レブセルSCの給与は、企業、大学とのコラボでもあり、消化吸収向上以外ににヒートストレスの軽減、蹄病の予防、繁殖への影響も調べることになっています。そのために牛舎内は、温度計だらけになりましたが(湿度、温度を記録するもの、THI温湿度指数計が成牛用と子牛用)、THI計は、特に見やすいので学生も気にしてくれています。

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THI計です。 牛のヒートストレスが簡単に分かります

 

 7月以降、年末までに20頭以上分娩しますが、サプリメントの効果を期待して夏を越えたいと考えています。



ゲノム検査

 2週ほど機械のことが続きましたが、もちろん、乳牛、和牛とも新しいことに取り組んでいます。 昨年度から進めているのですが、牛のゲノム検査検査です。

 昨年度、日高農場に繁殖に残していた勝早桜5の娘を最初に3頭お願いして、今回、福之姫を4頭、勝忠平、百合白清2を各1頭ずつお願いしました。

 書式が違うのは、あれなんですが、勝早桜は、受精卵の子、受精卵の子(平茂晴)に勝早桜を掛け合わせた子、あとは、高等登録(福栄)に掛け合わせた子です。 受精卵の子は、2代祖が安福久なので、期待通りの高い数値ですが、平茂晴の子でも意外に高い数値です。 あと高等登録の牛ですが、まぁそれなりの成績です。 しかし、親の哺乳量が高く、すでに2代連続で高等登録(残している2頭の娘とも)をしている繫殖成績抜群の牛ですので、改良しながら数値を見ていきたいと考えていました。その結果が、案外早く見ることができました。

 今回検査した福之姫の数値は、噂通りかなり高いですね。 福之姫×安福久が2頭、福之姫×幸紀雄が1頭、福之姫×百合白清2が1頭を調べましたが、やはり、福之姫×安福久は、Hが3つ以上あります。 受精卵を購入した甲斐があるものです。 

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福之姫のおかげでもありますが、ここまで進歩しました

 しかし、本当にうれしかったのは、本校でずっと自家繁殖している系統の福之姫も4つもHを獲得したことです。(写真の牛がその結果です。) 福之姫×百合白清×安福久×茂花国×安茂勝という最初のころの系統は、(上の勝早桜×福栄の一族でもある)どうなの?ですが、このころは、本当に和牛を始めたころで、血統もなにもない状態でしたが、少しづつですが、改良を重ねてここまで来ることができました。

もちろん、皮下脂肪厚、歩留基準値は、まだ低いですが、これも今後改良していきたいと考えています。

 今年度は、ホルスタインもゲノム検査を行っています。 最近は、メジャーどころの種牛の子牛をうませているので、どのような結果が出るか楽しみです。タイプの牛が多いので(ジャコビー、ケンダル、ソロモン、アットウッド、モントレー等など13頭を検査) 数値次第では、今後の繁殖にも影響すると思います。結果は、来月にも報告したいと思っています。

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これを手続きしてくれる会社に送ります。

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耳から検体を取ります


  

新型ロールベーラー

 デントコーンは、芽が出てきました。 日高農場は、札幌より1週間ほど早く、種まきをしていたので、少し早めです。 昨年は、札幌は、播種後、1か月ほど雨が降らず、蒔きなおしとなり、日高でも、農場は大丈夫でしたが、強風で生長点がやられ、蒔きなおしした農家もありました。道内は気温が低い日が続いていましたが、 この週末は28度まで上昇し一気に夏模様となりました。 遅れて蒔いた札幌のデントコーンも目を出し、結果的には、この暑さのおかげで後れを取り戻すことができかもしれません。

さて、デントコーンの種まきが終わったとおもいましたら、もう牧草シーズン到来です。早速この金曜日にペレ・オーチャードの刈り取りとなりました。 昨年より、数日早い作業となりましたが、気温が低くても、もうオーチャードは、穂が出てきてしまったので、刈り取るしかありません。 日差しにも恵まれて、購入した輸入牧草と変わらない素晴らしい出来になりました。

今年度、前回に続き耕作科が導入した機械として、ロールベーラーがあります。

 コロナの時期にベルギーから出航となり、乗組員にコロナが出たり、どこかの国の港がロックアウトしたりして、夏までに無事に日本に入港できるか心配しておりましたが、4月末に無事に到着して、この土曜日に納入されました。早速のこの収穫作業から使っていきます。

 

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トランスフォームしそうですが、ロールが出るところです。

 

 先代のロールベーラーも10年くらい使用してしましたが、日高農場の1日の作業面積が平均10haくらいとなり、さすがに機械の能力が足りなく感じることも多くなりました。 また、経年劣化からか大きな故障(部品の破損)も多くなり、牧草時期の故障は、収穫適期を逃す原因にもなりかねないので、今回の更新となりました。

 今までのベーラーがサイズ的にトラクターより小さめで、馬力にも余力があったので、これで漸くジャストフィットとなり、能力も向上して(作業スピードが倍近くになります。)、1日の収穫量も上がり、作業時間も短縮できると思います。 トラクターのニューホランドTSの作業機も、モアコン、8連テッター、ロールベーラー、パワーハローと充実してきました。より、現場に近い作業ができるように、作業機械も随時導入していきます。 

今年度導入した機材

今年、学園が導入、使用を開始した機械、施設ですが、耕作科が導入したGPS自動操舵システムがあります。 完全ロボットではないですが、既存のトラクターに取り付けられ、直線作業を自動で補正し、圃場での旋回操作のみを人的に行うものです。先週、日高農場で、デモを行ったのですが、フリーの電波を使用したため、トラクターの自動操舵が緩慢になってしまい、素人が畑を耕した状態になりましたが、札幌では、有料のラインを使用することで綺麗に耕すことができました。(使用したトラクターは、販売店からのデモ機でしたが) 

 

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圃場で試験したデモ機、来年度、購入できれば…1千万円はするそうです…


日高農場の畑は、一つの圃場が12ha、10haと非常に広い面積なので、テッター作業やロータリー作業は、学生には、技術と忍耐が要求される作業でした。(テッター作業は、GPSで解析されると作業機の重なりが多すぎたり、ロータリー作業はまっすぐ、畝が切れていなかったり…)このGPS自動操舵システムで、この両方から解放されます。 まだ、本校では導入できていないロボットトラクタですが、このように新しい技術(今回は、自動操舵とGPSですが、耕作科は、今年度、ドローンも導入しています。)の既存の機器(トラクター)への導入や運用の方法を学生たちには学んでほしいです。
 日高農場では、昨年末に完成した肥育牛舎は、この4月から完全稼働しております。
ひと独房に4頭まで、すでに3分房に3頭ずつ合計9頭の素牛(もちろん、自家生産牛)が導入され、全頭に生体センサーのU-motionを取り付けていますので、24時間牛の活動状況が把握できます。
このセンサーは、牛の採食、反芻、飲水、動態、横臥、静止を計測することが、牛の日々の動きをほぼ監視することが可能なりました。 これにより、データーが蓄積されれば、、早期の病気の発症を見つけることができ、肥育おいては、食い止まりや横臥事故などを防止することが期待されます。
小さい6か月ほどの子牛から、センサーを取り付けているのですが、この時期の子牛って、たまに完全に横になって寝るので、まして、少し広い肥育房ってこともあり、気持ちよさそうに寝るのです。(発酵床式牛舎なので、床が発酵熱で暖かいということもあると思います。 きっと気持ちが良いのでしょう)最初の設定では、横臥アラートが頻繁に発生しました。 テレビカメラも併設されているので、すぐに状態を見ることができるので問題はないのですが、たまに死んでるように見えるくらい爆睡している牛がいます。)今後少しづつ、設定を変えながら、熟成させたいと考えています。 
 畜産グループでは、今年度さらに新たな機材の導入を検討しております。 正式に導入時期が決定しましたら、ブログでも発表したいと思います。

体格審査の結果

 先週、行われました体格審査の結果ですが、ジャコビー  サブリナが初産で84点を貰うことができ、また、ほかのジャコビー シルビアなどの2頭の初産が83点と初産の牛たちが非常によく頑張ってくれました。(2産目の牛達が、84点と85点)7産目のマットソン イライザは、4回目のエクセレント4Eを目指しましたが、88点止まりと少し残念な結果になりました。

 サブリナは、85点を目指していましたが、乳頭配置、乳用性に少し欠けるところがあるとのことで、84点、84点を目指したシルビアも乳用性が欠ける点と少し乳房の付着が低いとのことで83点でした。 しかし、シルビアは、2産目以降の乳房に期待ができるとのことでしたので、今後が楽しみです。

 

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シルビアを審査中


 月曜日、デーリィ ジャパンに来ていただいて、サブリナの写真撮影を行いました。学生がいないので、25年ぶりに写真撮影のために牛を持つことになりましが、(肢持ちをすることが多かったので)この牛は、非常に背の高い牛なので頭を上げるのが、大変なはずなのですが、調教がしっかりと入っている牛なので、撮影自体はスムーズ進みました。(この状況を、ホームページで見れるようになるかもしれません。) 逆に50肩の私のほうが、腕を上げるのが大変でしたが、教えたことをきっちりと覚えているサブリナに、日胆の共進会でトップを取るために、学生と一緒に毎日ショーの練習していた2年前を思い出しました。

 残念なことに今年、開催される予定だった全共の中止の発表がありました。 全道の中止の発表はまだありませんが、今だ、大きなイベントが開催されないとなると難しいのかなと思います。普通でしたら、道内の予選が7月から始まるはずですから、状況によっては、開催されるかもしれません。 今後のコロナの情勢を見ていきたいと思います。

体格審査の準備

 今週は、体格審査の予定が入っています。私の転勤の影響もあって、日高農場生産の牛たちも、今回は札幌で体格審査を受けることになりました。 一昨年、日高共進会に出していた牛のジャコビー姉妹です。日高では、なかなか手が回らないのと(最近の日高農場は、牛の頭数が100頭を超えていることもあり、)チャンスがあれば、共進会にも出したいと考えていたので、札幌牛舎に2頭とも移しました。 この2頭のジャコビーですが、1頭は、素晴らしい体を持ち、もう1頭は、底面の高い乳器を持っています。 

f:id:hakkou-hidaka:20200511110315j:plain       f:id:hakkou-hidaka:20200512172638j:plain                             まぁ2頭合わせて、2で割ると素晴らしいのですが、そこは、なかなかうまくいかないところ。それでも、素晴らしい牛には、変わりありません。福井専門員や村山研修員が牛を洗い、毛刈りをして、準備を進めてくれていますので審査が待ち遠しいです。 コロナの影響で共進会が中止になり、学生の授業も始まっておらず、非常にさみしい札幌牛舎ですが、牛たちは、毎日変わらず、頑張っています。 実は、この4月に、札幌では、もう1頭ジャコビーのメスが生まれましたし(やはり、シドに賭けわせています。)今回審査を受けるジャコビーの1頭は、昨年採卵していたので、まだ初産ですが、すでに2頭もメスの子牛がいます。(エアインテイクとアットウッドです。)また、昨年、日高農場で生まれた牛、ジャコビーの息子のケンダルの娘もおり、2頭とも札幌に連れてきています。(ドアマンだらけになってしまう…) 他にモントレーとソロモンの育成牛もおり、世の中が少しづつ元に戻って行って、共進会がいつ再開しても、また、学生がいつ来てもすぐに参加できるように準備だけは、しておくつもりです。

先月、三石町の肥育農家さんを3件見学に行ってきました。 共励会で入賞を何回もされている農家さんで、非常に勉強になりました。 餌のやり方などの管理方法、肥育の現場で起こる問題など、様々な事柄を質問しましたが、大変親切に細かなことまで教えていただいて、大変有り難かったです。 また、実際に肥育されている安福久の産子や、美国桜の産子を見ることが出来、この系統が、なぜ市場で高い評価を受けているか理解することができました。やはり、他の系統とは、一味も二味も違うのだな~と感心した次第です。 今回、手に入れた情報は、今後に学園で肥育をする際には、生かしていきたいと考えています。

今月の市場ですが、農場では、あまり出すことのない安福久の系統の去勢を2頭(美津照重と芳之国)ともう1頭は、第1花藤×北の大福でした。美津照重だけが大きめで370㎏ありましたが、後の2頭は、いつもより少し軽めです(芳之国300㎏、第1花藤330㎏)。

市場は、先月よりも落札価格が下がりましたが、美津照重は、89万円、第一花藤は、74万円、芳之国は67万円でした。芳の国は、体重が軽かったのと幅がなかった為、この価格は仕方がないです。第1花藤は、幅があって、詰まっていて、大福の良いところが残っていたからでしょうか、期待していた以上の落札価格になりました。写真は、89万円の美津輝重です。

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 伸びがあって、370㎏と体重が合っても、尾枕もない牛は綺麗ですね。

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 毎回、このような牛を作れると良いのですが…但馬系の牛は、難しいです。

来月も3頭出荷予定ですが、これ以上、価格が下がらないと良いですね。(夏の相場は、下がることが多いですが)。