シェーン

 当場には、生涯生産乳量が10万キロを超えた牛が、1頭おります。 
 八紘学園の牛の中では、一番有名と言ってよいでしょう”ハッコー ミッドランド ウィス リナ”の孫になる”アウトサイド シェーン”と言う牛ですが、この8月に双子を分娩いたしました。 
 
しかし、残念な事に雄、雌のフリーマーチンの仔になってしまいました。(雌がほしかったな〜。)
 9産目という高齢出産、夏分娩、しかも双子と家畜管理者として最も恐れるものが三つも重なり、心配で胃が痛くなることもありました。
 8月もお盆を過ぎて、少しだけ涼しくなりましたし(先週、日高農場の最低気温は、16度まで下がっています。)食欲だけは、旺盛で、このまま無事に行ってくれたら・・・と願っておりました。
 9産目と言うこともあり、管理の方も注意して、強肝剤として、”リーシュア”を給与し、腸のカルシウムの吸収が低下しているかもしれないので”ミラクルオリゴ3”も給与を続けておりました。 他にビタミン、グリセリンを時期を見て給与し、万全の態勢で分娩を待っておりました。(双子だと言うことは、妊娠鑑定時にわかっておりましたので。普通より早めに餌の変更も行っていました。)
 お産自体は、非常に軽く、一次破水から2頭が出るまで、2時間もかかりませんでしたが、後産が1頭分しか出ず、この後の後産停滞による発熱が心配されました。
 すぐに自力で起立し、問題も無さそうに見えましたが、翌日から、餌を食べない、起立時に少しふらつくという低カルシウム症の症状を出し始めました。
 獣医先生をすぐに呼んで、カルシウムを打ってもらいましたが、餌は、牧草だけ食べるという状態が続き、カルシウム注射をもう一本打ってもらいました。
しかし、食欲だけは改善せず、”困ったな、胃も動いているし、体温も戻っているし、ケトン体も出ていない…”と皆で相談していると、”キューブは、食べるのか?”と獣医先生が手からやるとおいしそうに食べるではないですか…繰り返しても、食べ続け、そのあと普段の餌をやると食べ始めました。
 ”ただのわがままか・・?”
 スタンチョンが付いている飼槽なので、分娩後、かなりの回数で経口投与で薬をやっておりました。(牛にとっては、経口投与は、苦しいことです。) それで、牛が少しへそを曲げていたのかもしれません。(人間は、やなやつだと思ったのかも…) 
 馬を馴致する最初は、手から餌を食べさせることだと聞いたことがあります。ただ、薬をやることだけが、牛にとって良いわけではないということ、相手は、心のある生き物だと実感させられました。