肢を怪我した牛のバンナさん。その後の経過は、あまり思わしくありません。 怪我自体は、たいした事はないのかもしれませんが、その怪我の位置があまりに悪いのです。 ちょうど膝のところ。 立ったり、寝たりするときに一番体重をかけるところを深く傷つけているため、起きている時は、寝ることを、寝ているときは起きることに大きなストレスを感じているようです。 最初の二日かは、寝ることを拒否して、ほぼ半日立っていました。 昨日からは、寝ていることのほうが多くなりました。 体がかなり疲れてきているのだと思います。
 ひざの部分に大きなガーゼを当てて、バンテージを蒔き、膝に負担をかけないようにしてやりましたが、800kg近い体重が立つ時には、前足にかかるのですぐにずれてしまいます。 (大体、人間でも関節の包帯術は難しい。)あまり強く圧迫もしたくないので、ストッキングでバンテージを抑えてやろうと思います。(救命救急で教わりました。)
 牛が大きなストレスを受けるとすぐにルーメンに影響が出てきます。(肢を怪我するだけでなく、気温が高くなったり、餌の品質が悪い場合も食欲をなくす)
 ルーメンの環境は、非常に脆弱で、一度崩れてしますと元に戻すのには、とても時間が掛かります。(Phは、6.2〜6.8を維持することが必要)
 これが、狂い始めると牛は病気になってしまうのです。
 牛が胃を4つ持っていることは、そのうち第一胃は食道が変化したもので、消化液を出すことが出来ません。そこで、食べ物つまり草食動物ですから、草の繊維を分解するために、牛はこの胃の中に細菌や原虫を飼っているのです。(寄生させているわけです。)この寄生している生き物達に餌を供給していかなければ、牛は生きていけないのです。 だから、なんとしてもバンナには、食べてもらわないといけません。 
 立てば食べるので、そのときにできるだけ食べさしてしまえるような献立に変更。 濃厚飼料は、少し減らして、ルーサンキューブとビートパルプを増やし、チモシーのロールパックのほかに輸入モノの高級チモシー乾草も給与(競争馬にやるような高級品!!)とにかく、少しでも乾物摂取量を維持することとルーメンマットを形成し、Phを維持することで牛の体力低下を防止しております。
 抗生剤ももうしばらく注射し、患部には、腫れを抑えるアンドレス軟膏を塗ってやりました。
 食欲さえ維持できれば、来週には治療は終わると思います。