今、黄色ブドウ球菌の乳房炎の治療を行っています。Staphylococcus aureus 別称SAと呼んでいるこの乳房炎は、伝染性乳房炎の代表的なものです。(ほかに無乳性連鎖球菌、マイコプラズマも伝染性乳房炎の原因菌です)
 先週、札幌から来たこの牛(モナという名前)、体細胞が高いということだったので、来たその日のうちに乳汁検査に出しました。
 ストリップカップでは、ブツは無く、PLテスターでは、後ろの分房で多少とろみが見られたぐらいでした。乳期末期だということもあり、この程度は許容範囲かとも思いましたが、前回の乳期でSAに感染していたこと経歴の牛だったので、一応検査をしてみることにしたのです。 前回、乾乳期に治療し、今回の乳期では、SAは見つからなかったらしいので完治していることになっていたのです。
 結果は、陽性の無限大・・・・ 早速治療を開始しました。
 タイロシンとセファゾリンの3日間の連続投与です。前回これで完治しなかったのですから、今回もあまり期待はできません。
 SAは、非常に治癒は難しい乳房炎です。 なぜ治癒できないかというとこの菌は、乳房の奥にコロニーを作り、そこに巣くってしまうからなんです!! 普通の乳房炎軟膏を使用しても、その効果は、表面にしかなく、コロニーを死滅させることができません。だから一時的には治癒するのですが、10日前後にまた復活し体細胞を増加させるのです。
 さらにSAの恐ろしいことはこれだけではないのです。
 この菌は、搾乳機、人間の手を媒介にして、伝染していくのです。
だからSAの感染牛の乳汁は非常に危険なのですが、だいたい乳頭口のゆるい牛に限って、SAに感染するので被害がさらに拡大するのです。(このモナという牛も乳を漏らす・・・)
 SAの菌は、乳頭口や乳頭の傷にいるといわれています。 だから過搾乳は禁物、また、人間の手の指紋の中でも入ってくるので、乳汁が付いてもすぐきれいにできる搾乳グローブは必須になります。
 とにかく、この菌と対抗するには、毎日の作業をより徹底させるほかありません。 
 牛床は常に清潔で乾燥させること。 搾乳の祭、過搾乳は禁止、ストリップカップ毎回洗浄、グローブは常に乾燥状態に、ストレスは与えずに、ビタミンの給与も・・・・・ それでも感染する可能性はあるのです。 もうすぐ初産が分娩するので、(バケットミルカーは一台しかないので、同時に使いたくない)感染させないうちに乾乳ししてしまい隔離するほか無いでしょう。 これで今度治らなければ・・・・